人件費率とは?正しい計算方法と業種別の適性目安まとめ

人件費は、経費のなかでも多くを占める費目です。事業を運営するためには、適切にコントロールしなければなりません。そのために、人件費率が重要視されます。

「人件費率って何?」

「自社の人件費が高いのか安いのかを知りたい。」

このようにお考えではありませんか。

人件費率を適切な数値に保つことで、事業運営にかかっている人件費を最適化できます。そこで本記事は、以下についてまとめました。

  • 人件費率と労働分配率の違い
  • 目指すべき人件費率の指標
  • 人件費率の計算方法
  • 職業別の人件費率の目安
  • 人件費率を適正にする方法7つ

人件費を適切にコントロールしたいとお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。

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人件費率とは?

人件費率とは、売上に対する人件費の割合のことです。企業の利益を計算するために、重要な要素といえます。

以下の順番で、人件費率について見てみましょう。

  1. 人件費とは
  2. 人件費率は売上に対する人件費の割合

ひとつずつ解説します。

1.人件費とは

人件費率を知るためには、人件費について知っておきましょう。人件費とは、従業員に支払う費用全般を指します。毎月支払う給与はもちろんのこと、以下のような項目も人件費として考えます。

  • 賞与
  • 社会保険料
  • 退職金

従業員のモチベーションにつながる重要な費用で、気軽にコストダウンできるものではありません。

人件費を削減しなければならない事態を避けるため、適切な数値でコントロールする必要があります。そのために重要な考え方が、人件費率です。

2.人件費率は売上に対する人件費の割合

繰り返しになりますが、人件費率は売上に対する人件費の割合のことです。人件費率を把握することで、売上のうちどれくらいの費用を従業員のために使用しているかがわかります。

人件費率は、高すぎても低すぎてもいけません。人件費率が高い場合、人件費を使いすぎている恐れがあります。従業員に還元することは大切ですが、人件費率が高すぎると経営が破綻しかねません。

一方で、人件費率が低すぎると従業員のモチベーション低下につながり、生産性の向上が難しくなります。したがって、人件費率は適切なバランスを保つことが重要です。

人件費率と労働分配率の違い

人件費の割合を出す項目には、労働分配率というものもあります。人件費率が売上に対する人件費の割合であることに対し、労働分配率は付加価値額に対する人件費の割合です。

付加価値額とは粗利(売上総利益)のことで、売上から売上原価(※)を差し引いたものを指します。したがって、人件費率と労働分配率の大きな違いは、原価を考慮する点です。
※製造業の場合は人件費を含む「製造原価」を差し引きます。

人件費率は適切な数値でも、原価に費用がかかり労働分配率が高くなるケースも考えられます。労働分配率も人件費を配分する判断材料として活用できるため、人件費と同様に重要な経営指標です。

目指すべき人件費率の指標

事業経営するうえで適切な人件費をコントロールする場合は、労働分配率を指標にするのがおすすめです。なぜなら、人件費は売上ではなく、仕入れや外注費などの費用を差し引いた粗利(売上総利益)から支払う(※)ためです。
※製造業を除く

たとえば、以下の例を考えてみましょう。

  • 売上:1,000万
  • 人件費:500万
  • 仕入れ:500万

人件費率は、以下の計算から50%であることがわかります。

  • 人件費率:500万[人件費]÷1,000万[売上]×100=50%

一方で、労働分配率は以下のとおりです。

  • 労働分配率:500万[人件費]÷(1,000万-500万[仕入れ])×100=100%

労働分配率でみると、利益がまったく無いことがわかります。もちろん、上記は極端な例ですが、適切な事業運営のためには正しい指標をもとにした目標設定が重要です。

人件費率の計算方法

人件費率と労働分配率は、以下の計算式で求められます。

  • 人件費率(%)=人件費÷売上×100
  • 労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100

経営者としてはいずれも低くしたいと考えてしまいますが、低すぎてもいけません。低すぎると従業員に十分な還元ができていない恐れがあり、以下のような影響が考えられます。

  • 従業員のモチベーション低下
  • 従業員の退職
  • 従業員の定着率低下
  • 企業としてのイメージダウン

人件費率や労働分配率を意識し、経営を圧迫しないような人件費を目指しましょう。

業種別の人件費率の目安

業界別の人件費率は、以下のとおりです。

業界 人件費率
飲食業 約41%
宿泊業 約36%
サービス業 約43%
建設業 約18%
製造業 約29%
卸売業 約11%
小売業 約18%
IT業界 約30%

▼参考
株式会社TKC
一般社団法人 情報サービス産業協会

あくまで目安ですが、参考にしつつ自社の目標を決めるのがおすすめです。

順番にみていきましょう。

【業界1】飲食業

飲食業の人件費率は、約41%です。

飲食業は完全な自動化が難しく、調理や注文の提供は人による作業が多くみられます。そのため、人件費率はほかの業界と比べて高くなりがちです。

しかし、ロボットによる自動化が開発されているため、少しずつ飲食業も自動化が進んでいます。

人件費率が高い場合は、人件費に対して利益が少ないか、利益に対して人件費が多いといった状況に陥っている恐れがあります。そのような状況を改善するため、利益向上とともに業務効率化を進めることが重要です。

【業界2】宿泊業

宿泊業の人件費率は、約36%です。宿泊業も人の負担が大きい業界のひとつです。料理やフロントなどの案内だけではなく、場所によってはコンシェルジュのような宿泊客の困りごとを解決する役目の人もいます。

【業界3】サービス業

サービス業の人件費率は、約43%です。サービス業とは、顧客のニーズを満たす仕事全般を指すため、業種は多種多様です。そのため、平均とは大きく異なる業種もあります。

【業界4】建設業

建設業の人件費率は、約18%です。建設業とは、建設工事だけではなく、建設において必要となるすべての仕事を指します。家を建築する大工をイメージする方も多いと思いますが、以下の業務も建設業です。

  • 電気通信工事業
  • 造園工事業
  • 舗装工事業

建設業は、労働力不足が問題視されているため、現場や事務にかかわらず業務効率化が求められています。

【業界5】製造業

製造業の人件費率は、約29%です。製造業は無人化や自動化が進んでいるため、人件費率は減少傾向にあります。

生産はロボットが行い、その管理のために人が1人という製造ラインもみられるようになりました。ただし、機械のリース代やメンテナンス費用が大きくなっているといわれています。

【業界6】卸売業

卸売業の人件費率は、約11%です。卸売業とは、生産者から小売店へ製品を販売する業種です。

小売店との違いは、販売する相手が消費者か事業者かといった点にあります。複数の生産者から一括して仕入れ、小売店に卸す中継的な役割といえます。

【業界7】小売業

小売業の人件費率は、約18%です。小売業は、卸売業者から仕入れた商品を消費者に販売します。たとえば、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどです。

人の負担が多い業種ですが、自動レジの導入やキャッシュレス化によって省人化が進んでいます。

【業界8】IT業界

IT業界の人件費率は、約30%です。IT業界の業種は多種多様ですが、最先端の技術を取り扱う場合が多くみられます。仕入れにかかる費用が少ないため、人件費が高い特徴をもちます。

人件費率を適正にする方法7つ

人件費率を適正にするためには、以下の方法があります。

  1. 単価を上げて売上向上を図る
  2. 業務効率化を図る
  3. 原価を見直す
  4. 人件費削減のためツールやシステムを導入する
  5. 業務をアウトソーシングする
  6. 人事評価制度を見直す
  7. 社員数を減らす

順番にみていきましょう。

【方法1】単価を上げて売上向上を図る

人件費率が高すぎる場合は、売上を向上させることで解決できます。売上を向上できれば、従業員に支払う人件費はそのままで人件費率の低減が可能です。

売上向上のためには、商品やサービスの単価を上げることが有効です。そもそも競合との価格競争により、適正価格より低い可能性が考えられます。

顧客のニーズと単価を比較して、最適な数値に調整しなければなりません。特に、ニーズが高い商品やサービスは十分に魅力がある証明となるため、利益を上乗せしても問題ないケースもあります。

また、商品やサービスに価格以上の付加価値があれば、単価を上げやすくなります。

【方法2】業務効率化を図る

商品やサービスの単価アップを検討するのと同時に、業務効率化も目指しましょう。業務効率化を実現できれば生産性が向上し、結果的に利益向上につながります。

業務効率化のためには、業務内容の見直しをしなければなりません。現在行っている業務に「ムリ・ムダ・ムラ」がないか確認しましょう。

たとえば、以下の内容が該当します。

  • ムリ:通常、数時間かかる作業を数十分で完了させるスケジュール
  • ムダ:形骸化した会議やルール
  • ムラ:繁忙期と閑散期で品質が異なる

業務における問題点を改善できれば、作業時間の削減や品質向上につながり、業務効率化を実現できます。

なお、業務効率化については以下の記事で紹介しているので、ぜひご一読ください。

業務効率化と生産性向上の違いとは?成功事例から学ぶ有効な施策

【方法3】原価を見直す

原価を見直すことで、人件費率を下げられます。原価が小さくなれば、相対的に利益の向上につながるからです。

原価の見直しは、仕入れの費用を小さくするだけではありません。以下の方法が考えられます。

  • 作業工程を効率化し、生産性を上げる
  • 水道光熱費を見直す
  • より効率的に生産が行える設備を導入する

原価の見直しは人件費率の低下に有効ですが、商品やサービスの質を落とさないように注意が必要です。顧客満足度が下がれば売上に大きく影響する恐れがあるため、安易なコストカットは避けましょう。

【方法4】人件費削減のためツールやシステムを導入する

人件費率を下げるために有効な手段は、売上を上げるほか、人件費の削減が挙げられます。人件費を削減するためには、ツールやシステムの導入が効果的です。

業務によっては、人が数時間かかっていた作業を数十分で完了できる場合もあります。たとえば、以下のツールやシステムを導入するのがおすすめです。

  • エクセルのマクロ
  • 顧客管理システム
  • RPA

新しいツールやシステムを導入する際は導入コストがかかりますが、エクセルはすでに導入済みの企業がほとんどだと思います。

その場合はマクロを活用すれば、導入コストをかけずに効率化を実現できる可能性があります。専門的な知識が必要ですが、ぜひ試してみてください。

【方法5】業務をアウトソーシングする

人件費を抑えるのであれば、業務をアウトソーシングする方法がおすすめです。自社で従業員を雇用するより費用が抑えられるうえ、高い品質を期待できます。

アウトソーシングできる業務の例は、以下のとおりです。

  • 請求書や発注書などの作成
  • 資料作成
  • Webサイトの運用

上記のようなノンコア業務は一般的にマニュアルやフローがあり、それに従えば誰でも同じ結果を得られます。

ノンコア業務をアウトソーシングすることで、自社の従業員はコア業務に集中できます。結果として、人件費の削減や生産性の向上が可能です。

なお、ノンコア業務のアウトソーシングならオンライン秘書・オンラインアシスタントサービス『i-STAFF』がおすすめです。i-STAFFは1時間2,640円から幅広い業務を依頼できるため、人件費を削減できます。

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また、以下の記事でおすすめのオンライン秘書会社を紹介していますので、比較検討したい方はあわせてご参考ください。

オンライン秘書とは?おすすめ15社を徹底比較【2024年最新】

【方法6】人事評価制度を見直す

人件費率を下げるために、人事評価制度を見直して、従業員に支払っている給与を適正にするのも有効です。一概に給与を下げるのではなく、上げることも視野にいれて見直しましょう。

給与(人件費)を上げて人件費率を下げることは矛盾しているように考えられますが、以下のような効果が見込めます。

  • 従業員のモチベーションアップによる生産性向上
  • 企業への定着率アップによる採用コストの削減

人件費を下げたいからといって、安易に給与を減額するのは避けましょう。生産性の低下や離職率アップにつながり、長期的な視点では企業にとってマイナスに働く恐れがあります。

【方法7】社員数を減らす

社員数を減らすことで、人件費の削減が可能です。1人あたりの人件費は、給与以外にも福利厚生や退職金などがかかります。

月収30万円の社員が退職すれば、給与だけでも年間で360万円の人件費が削減できます。ただし、正当な理由がなく社員数を減らすリストラは、大きなリスクがあります。

リストラの効果は即効性がありますが、以下のような悪影響を及ぼす恐れがあります。

  • 残っている従業員のモチベーションが下がる
  • 「業績が悪化した」と思われ、評判を落とす

短絡的な人件費率の低下には効果がありますが、最終手段であることを理解し、可能な限りほかの手段で人件費率に対応するのがおすすめです。

適切な人件費率を設定して業績アップを図ろう

人件費率は、売上に対する人件費の割合です。高ければ従業員に使用している金額が多いことを意味し、低ければほかのことに使用していると考えられます。

人件費率は、高すぎても低すぎてもいけません。高すぎる場合は経営を圧迫する恐れがあり、低すぎる場合は従業員のモチベーション低下につながります。

自社にとって適切な人件費率を設定して、企業の成長につなげましょう。

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